■一般社団法人アップサイクル体験記■

〇はじめに

 2025年9月から2026年3月まで一般社団法人アップサイクルで勤務していました太田と申します。前職では約6年新聞社に勤務し、デジタルや広告の仕事をしていました。この体験記では、私が半年間一社アップサイクルで行った業務や、業務を通して感じたことをまとめています。
 一社アップサイクルの業務は多種多様な価値観に触れることができる仕事です。「アップサイクルや伝統工芸に興味がある」という方はもちろんですが、「ここでやりたいことが見つからないかも」という方も、是非ご一読いただければ幸いです。

〇一般社団法人アップサイクルで勤務を始めたきっかけ

 就職活動の時から「社会貢献性の高い仕事がしたい」という気持ちがあり、一社アップサイクルのお仕事の話を聞いた際はその気持ちがより高まっているタイミングでした。アップサイクルや伝統工芸というものにすごく関心があったかと言えば正直そうではなかったのですが、「持続可能な社会づくり」という団体の目的は私がしたい仕事と大きな目で見れば近いものがあると思い、働くことを決めました。
 また事務局長の瀧井さんのお話や過去のインターンの方の体験記を見て、事務局や会員の皆さんの仕事への熱い思いを感じ、そんな方々と働いてみたいと思ったことも勤務を決めた理由の一つです。

〇一般社団法人アップサイクルでの働き方

 一般社団法人アップサイクルでは、基本リモート(在宅)で業務を行っており、事務局メンバー間のコミュニケーションはSlack+オンラインミーティングで行うことが多いです。会員さんとのコミュニケーションは会員さんによって異なり、メールや電話の方もいればSlackの方もいらっしゃいます。
 しかし実際にお会いしたり、現場を見ないと分からないこともあり、出張の機会も多くあります。私は約半年の勤務でしたが、6回ほど出張に行かせていただきました。また会食にも度々同席させていただきましたが、普段仕事の場では聞けないお話などをお聞きすることができとても楽しい時間でした。
 体制としては基本1つのプロジェクトに責任者が1人おり、交流会など大きいイベントの場合は事務局メンバーが追加で何人か入って進めていく形になります。責任者が1人と言っても全てを1人で決める訳ではなく、事務局長の瀧井さんと定期的な1on1を実施したり、都度時間をもらって共有・相談をしながらプロジェクトを進行していました。会員プロジェクトの場合は、事務局の担当者と会員さん側の担当者が連携してプロジェクトを進めていく形になります。

〇取り組んだこと

1.交流会の運営

 一般社団法人アップサイクルでは、年に2回会員交流会を行っています。私は2025年11月に行われた第6回アップサイクル交流会の運営を担当し、40人以上と大変多くの方にご参加いただきました。実施前の準備段階では、まずつつがなく会を終えることに注力しており交流会の目的などをじっくり考えることができませんでしたが、交流会後に行った事後アンケートでは大変参考になるご意見をたくさんいただきました。
 まず皆さんが時間とお金をかけて交流会に来てくださる理由は、事業化のきっかけを作るというところにあります。そのためにはただ単に交流の場を提供するというだけでなく、有意義なディスカッションを行うための準備が必要だということを感じました。また真逆のご意見を書いていただいている会員さんもおり、組織の目的や事務局の役割という部分を会員の皆さんにもしっかり共有いただくことが大切なのではないかと思いました。
 しかし第6回の交流会を経て実際に事業化に向けて連携を始めた会員さんも何社かおり、まずは交流会の場を作り続けることが1つ大事なことだと思います。

2.アップサイクル通信

 上記の交流会の結果を受け、「会員さん同士がお互いのことを知る機会があってもいいのでは」と思い、事務局が会員さんに1社ずつインタビューをして、そのインタビュー記事を会員さんに配信するという取り組みを提案しました。現時点ではまだ形になっていないのですが、取材をする事務局メンバーにとっても会員さんの取り組みを知るいい機会になっていると感じています。

3.ワークショップ

 2025年11月に会津若松の鶴ヶ城で行った会津型のワークショップに運営スタッフとして参加しました。普段は基本テレワークということもあり、消費者の方と触れ合う機会がないためとても新鮮でした。ワークショップには子供から大人まで幅広い層の方にご来場いただきましたが、通りすがりで興味を持っていただいた方だけでなく、TSUMUGIの店舗に一度来ていただいた方や、SNSの投稿を見てわざわざご来場いただいた方もおり、とても嬉しく思いました。アップサイクルや伝統工芸に関心のある層はそこまで多くはないかもしれませんが、一度ファンになっていただければ深い関係性を築くことができる方々なのではないかと感じています。またお客さんの喜ぶ顔を見ることができるというのはその後の業務のモチベーションにも大きく繋がりました。
 またTSUMUGIの会津店舗にも伺いましたが、TSMUGI製品の持つ雰囲気を感じることができ、その後TSMUGI製品のデザインを考える時にとても役立ちました。一社アップサイクルで勤務される方は、ぜひ早いうちに一度店舗に訪問いただくことをお勧めします。

4.会員プロジェクト

 会員さんと一社アップサイクルが共同で行うプロジェクトの進行、サポートを担当しました。ここでは私がメインで担当した2つのプロジェクトについて記載します。

<じゃないほうのブロッコリーレストラン>

 ブロッコリーを生産する会員企業さんと連携し、ブロッコリーの茎を使った料理を提供するカフェを期間限定で開催しました。(プレスリリースはこちら

 プロジェクトが決まった初期の頃に、今回ブロッコリーを提供いただく会員企業さんの本社がある浜松を訪問しました。ブロッコリーの畑を見せていただいたり、ブロッコリーの加工技術を詳しく説明いただき、会員企業さんの今回のプロジェクトに対する思いを肌で感じることができました。

 このプロジェクトは上述の会員企業さん以外にも、料理のレシピを考案いただくシェフ、実際に料理を提供いただくカフェの方など関係者が多く、その調整が最も難航しました。メールで全員宛てに連絡をしても宛先が多いのでどうしても流れてしまうことが多く、その場合は別メールで確認をするなど、「必要な部分では関係者全員の承認を確実に取る」ということを心掛けて進行していました。
 またそれぞれ普段活動している業界が異なるため、「常識が異なる」という点も難しい部分でした。例えば記者発表会で試食を提供するにあたり、どの料理をどれぐらいの量で提供するかなど細かく決めておかなければならないところ、こちらはそこまで細かく決めなくてもいいと思っていたというようなことが多々ありました。こういった点は、定期的に短時間でもいいのでミーティングをするなど、認識のすり合わせをこまめに行うことで防げたことだったと思います。
 カフェの実施までは難しい部分も多かった企画でしたが、実施後は大変多くのメディアに取り上げてもらいました。ブロッコリーが2026年の4月から指定野菜になるというタイミングと合わせた実施だったこと、また物価が高騰する中で食卓に一品増やすためにブロッコリーの茎を使いませんか、という文脈を作れたことがメディアに多く取り上げられた理由だったと思います。会員さんはもちろんのこと、消費者の生活にもいい影響を与えられたということが実感でき、この企画の実施に関わることができてよかったと強く感じました。

<NEOCLAY®×TSUMUGI>

 有田焼の陶土を作る過程で捨てられていた土、「珪」を成形可能な陶土生まれ変わらせたNEOCLAY®とTSUMUGIにパルプを組み合わせてコラボレーション製品の販売を開始しました。(プレスリリースはこちら

 このプロジェクトでは、プロジェクトに実施が決定した初期の段階からメインで進行をさせていただきました。まずは有田焼というものがどういう製造過程で、どれぐらいの時間をかけて作られるものなのか、という基礎的な部分から勉強する必要がありましたが、2回ほど有田を訪問し実際に有田焼が作られている窯を見せていただいたり、陶土を作る工場を見せていただくなど、会員さんに大変丁寧に教えていただいたことで最低限必要な知識は身に着けることができたと思っています。やはり実際に現地を訪れたり、対面でお話をする時間をいただけたことが理解を深めることに一番役立ったと感じています。さらに直接現場の方から現状の有田焼の課題などを聞くことで、「一社アップサイクルとしてできることは何なのか」ということをより真剣に考えるようになりました。自分のモチベーションの部分でも、現地を訪れるという経験はすごく有意義だったと思います。

 また先方の担当者の方とは電話なども含め密なコミュニケーションを取ることで、いい関係性が築けていたと思います。これまでは電話だと「言った言わない」という部分が不明確になるためなるべく電話を使わない方がいいと思っていましたが、電話で話すことで相手の温度感が分かったり、いい関係性を築くきっかけになったりということもあるということは大きな学びでした。会員さん側がこういったコミュニケーションをリードしてくださった部分も多く、とても感謝しています。いい関係を築けていたことで無理なお願いでも頼みやすくなったり、仕事がより進めやすくなった実感もありました。
 プロジェクトの進行自体は順調に進めることができましたが、メディアが取り上げたいと思う要素が弱かったという部分が今後の改善だと考えています。特に有田焼が注目されるようなタイミングではなく、消費者や製造者にとってメリットになるようなことも言えなかったため、メディアとしては伝えにくい内容になってしまったのかなと思います。「陶土のアップサイクル」という点では有田焼においては初めてで、珍しい取り組みではあるのですが、それだけでは多くの人に着目してもらうのは難しいということを学びました。  
 私はここでプロジェクトを離れてしまいますが、今後この「NEOCLAY®×TSUMUGI」の製品をきっかけに、有田焼やアップサイクルというものに興味を持つ方が少しでも増えてくれることを願っています。

〇個人として得られるスキル

一社アップサイクルでの業務を通して、下記の力が身に付いたと感じています。

・自分で考える力

 企画の担当者が実質そのプロジェクトの責任者となり、色々な判断も任せてもらえるので、上司に判断を任せるのではなく自分で考えて判断するという経験ができることはとても貴重だと思います。また「これまでこうやってきた」というものが無いので、仕事の進め方を1から自分で考えるということもいい経験になりました。

・臨機応変さ、スピード

 関係者の人数が少なく決済のスピードが速いため、直前に一気にプロジェクトが動き出したり、急な変更が発生したりするケースがあります。そのような場合における臨機応変かつ迅速な対応力が身につくのではないかと思います。

・1人1人と向き合うコミュニケーション能力

 前職の時は「企業と企業」のコミュニケーションという印象がありましたが、一社アップサイクルでは1人1人に責任を持った仕事を持たせてもらえるため、「個人と個人」のコミュニケーションという印象が強いです。自分のやり方を押し付けるのではなく、相手に合わせてコミュニケーションの方法を使い分けることが必要とされていると感じました。このようなコミュニケーションの取り方は、企業規模に関わらず活かせるスキルだと思います。

〇最後に

 私は一社アップサイクルでの半年間の業務を通して、仕事に対する価値観が少し変わりました。これまでは「仕事は仕事、プライベートはプライベート」と割り切って考えるべきだと思っていましたが、「趣味が仕事」「休みはないけど楽しい」とお話されている会員さんや事務局の皆さんの姿を見て、純粋にとても素敵だなと感じました。しかしそれと同時に、外からは見えない大変なことも沢山あるのだろうと感じることもあり、人生をかけて仕事に向き合う方々の助けになるような仕事をいつかしてみたい、と今は思っています。
 私は社会人を経験してから一社アップサイクルで勤務させていただきましたが、まだまだ知らない世界ばかりだということに改めて気付かされました。一社アップサイクルで勤務するという決断をしてよかったと心から思っています。自分の世界を広げたい方、新しい挑戦をしたい方は、是非お気軽にお問い合わせください。